2021年2月20日土曜日

翻訳記事: ジタ4-4貿易ハブ(Jita 4-4 trading hub)

 

(原文:EVE Travel : Jita 4-4 trading hub


ジタ4-4貿易ハブ複合施設の全体像

 私が生まれ育ったのは、最寄りの主要都市まで数時間はかかるような離れた場所だった。そこはガレンテ・プライムの主要な自然保護区の反対側だった。私の父は、なるべく軌道シャトルではなく、陸路を使うよう心掛けていたため、街に出掛けるときはいつも保護区を通る舗装された道路の上を走っていた。父は根っからのテクノロジー嫌いなのだが、こうした皮肉は私も色濃く受け継いでいる(訳注:ガレンテ人はテクノロジーに強い関心を寄せる進歩的な人間が多いことで知られる)。街に出掛ける機会は年に数回ほどしかなかったが、正面の窓を眺めているときに見た光景は、今でも忘れがたい記憶として残っている。保護区のなだらかな平原の先にある地平線から、次第に姿を現してきたのは、人を惹きつけてやまない輝きを放つ、モダンな完全環境都市ガレンテ、そしてそこに住まうモダンなガレンテ人の生活だった。それらが保護区の緩やかな緑の丘の向こうに、ゆっくりと立ち現れてくるのだ。その光景は、私の少年時代を通して忘れがたい記憶として今も残っている。多分、父が気に入った以上に私はあの光景に魅了されたのだと思う。あの光景にまつわる思い出は色々とあるが、その思い出は必ず、贅沢な時間や、楽しかったこと、そして冒険の記憶に満ちていた。

 

ジタ記念碑の奥に見えるのがステーションの実際の姿

 こうした光景は、最近でこそあまり思い出さなくなっていたが、最近改築されたばかりのジタ4-4カルダリ海軍組み立て工場(Jita 4-4 Caldari Navy Assembly Plant)の近くにワープアウトしたとき、嫌が応にもあの時のことを思い出すことになった。もちろんジタ4-4(と慣例的に呼ばれているが、同じ衛星を周回するもう片方のステーションの存在は忘れられやすい)の悪名は私たちのよく知るところであり、今更ここがNew Edenで最大の貿易ハブであると説明する必要もないだろう。ここを行き交うISK、取り引きの数、輸出入の総量、手に入る希少アイテムの豊富さ、その他あらゆる尺度で比べても、ジタ4-4は最大手に君臨している。その市場規模はあまりに群を抜いてるために、エコノミストが地域ごとの経済を分析する際は、しばしばザ・フォージ(The Forge)を除外することで他のリージョンの経済活動を詳細に見ることがあるほどだ。控えめに言えば、ジタ4-4はNew Edenの経済の心臓部にあたるというわけだ。

 

ステーションの中央都市景観

 ジタが現在の姿へと発展したことは、決して当たり前ではなかったが、人は得てしてそのことを忘れやすい。だが、ジタが経済ハブとして支配的な位置を占めるようになったのは、必然ではなかった。黎明期の頃、コンコードはそれぞれの地域を結ぶハイウェイゲートの交通網を設立したが、その交通網は多くの人が知っての通り、ユーライ(Yulai)に通じる道になっていた。こうしてカプセラの歴史上、最初の中心的貿易ハブとしてユーライというシステムは成長した。しかし、交通網の撤去がYC106年に始まり翌年を通して撤去作業が完了すると、ユーライの市場は次第に中心的役割を失うことになった。ジタは、それ自体いくつものリージョンに近接している場所だが、これはトレーダーにとって、他の地域の主要な市場と価格を比較しやすいというメリットをもたらした。また当時は、ミッションを提供する有名なエージェントも常駐していた。ジタは地理的な条件に恵まれた地域に位置していたため、すぐさま頭角を現して経済の中心地になり、多くの人が言うように、後は歴史の知る通りである。こうしてジタ4-4は事実上の貿易ハブへと成長し、あらゆる行商人、詐欺師、そして(ジタを語る上で忘れられやすい)真っ当なトレーダーが集結する地となった。

 

背景に都市景観が見える、ステーションのとある倉庫区画

 ジタはNew Edenの経済の心臓部として現在の地位を確かなものにしているからこそ、拡大する経済活動を支えるためにはジタ4-4のステーションを大幅に拡張する必要があった。しかし、恐らくその機会は長いこと後手に回されてきた。最近、ステーションのメインマーケットの階を散策してきたのだが、その混雑具合と言ったら驚くばかりだった。床には所狭しと商品が敷き詰められ、歩く隙間もなかった。商売品はトレーダーが見つけられるなら良しとばかりに押し込められており、それ以外にはエアダクトがあるか、あるいは野ざらし同然で投げ売りされていた。倉庫には大量の輸入品が溢れかえっていた。あるトレーダーから聞いた話だが、ステーションの倉庫を正規に使うなら、順番待ちのリストはその当時で10年近く先まで予約でぎっしり埋まっているとのことだった。

 

別の角度から望むステーションの中央平地。アトリウムのような覆いの上に、花火が上がっている

 何か手を打たなければならないことは明らかだった。長年に渡るさまざまなメガコーポからの嘆願を受け、また経済上のメリットも大きいことから、ついにカルダリ海軍の官僚は重い腰を上げてステーションの拡張工事を承認した。この拡張工事には、現代の貿易ハブとしての需要に応えて、衛星施設の建造と軌道建造物の増築を伴った。New Edenで唯一の、現代的な貿易ハブの誕生である。そしてその成果は素晴らしいものだった。

 

ステーション後方にある別の倉庫区画。ジタ恒星の直射光に晒されている。

 話は冒頭に戻るが、ワープ航法を抜け出してジタ4-4のステーション付近に到着したとき、一瞬にして心は少年時代に引き戻され、地平線の彼方からガレンテの街並みが姿を現してきたときの光景を私は思い出した。真っ暗な大洋から、華やかな輝きを放つ大都市の姿が立ち現れてきたのだ。しかしカルダリの建造物を見てガレンテの街並みを思い出してしまうのも、無理からぬことだった。何せカルダリ海軍の設計者は、モダンな惑星ベースの大都市のあるべき姿として十分な威厳を発揮するよう、この大都会を設計したのだから(訳注:カルダリとガレンテの両国は歴史的に激しく対立を繰り返しており、カルダリのアイデンティティはガレンテを否定することにあり、ガレンテのアイデンティティはカルダリを否定することにあると言っても過言ではない。両国の思い描く理想的な都市設計に何かしらの共通点があるというのは、非常に驚くべきことである)。新しく拡張されたステーションは、広い基礎フレームの平面上に鎮座するように位置していた。その平面から伸びているのは、取り引きを行う上で欠くことのできない倉庫や収容施設のスペースばかりではなかった。絢爛豪華な高層タワーがいくつも並立し、中は全て人が住める居住区になっている。そしてそれらのタワーを代表するように、ステーションの正面には真に巨大なセントラルタワーがそびえ立っていた。それはまるで巨大母艦の船首として機能するのではないかと思わせた。セントラルタワーは、巨大なステーションを出入りする船舶をほとんど全て眺められる位置にあった。だが、セントラルタワーから見渡せるのは、全てではなかった。船の出入り口は文字通りあらゆる位置に設けられており、こんなところにもあるのかと驚くほどだ。また、あらゆる種類のホログラフィック看板が、一寸の隙間もないほどにステーションを埋め尽くしている。そこにはカプセラが望み得るあらゆるものについて、広告や最新情報が打ち出されていた。

 

補助施設ディープコア採掘のプラットフォームの様子。衛星の地表には居住コロニーが広がり、両者をスペーステザーが接続している。

 全体的なデザインが持つ全き荘厳さや、圧倒的な……まあ、資本主義的な凄さに目を向けていると、そのデザインにはいくつかの他の要素があることに気付く。迫り来るようなセントラルタワーの後方、巨大な中央の平地の街並みの上にかぶさるように、アトリウムがそびえ立っているが、縮尺を無視して見れば、それは歩行者天国のショッピングモールにしか見えなかった。そのスケールを考えれば、驚きの光景だ。アトリウムの下では、巨大なセントラルタワーから伸びた橋が互いに交差しており、ステーションの上方に行けるようになっていた。小さな光の断片が橋に沿って行き交い、深い谷を越えていく様は、まさしくそこに何千人という人々が実際に動いていることを意味しているが、それでも私の目には、ある巨大なショッピングモールを見ているみたいだという印象を抱かせた。

 

ジタ4-4近くの他の主要な補助建造物

 こうした印象は、近くの衛星施設や補助建造物についても全く同じだった。今はステーションの裏側に隠れて見えないが、そこには現在もジタ記念碑の跡地がある。跡地は警告によって囲まれているが、今は警告に加えてスポットライトがジタ記念碑を照らすようになっている(訳注:ジタ記念碑は、起業家の故Ruevo Aramが主催したなぞなぞコンテストの勝者を祝して建造された記念碑だが、YC113に暴徒化したカプセラたちによって破壊された歴史がある)。カプセラたちの抗議から得た教訓をコンコードは今もなお忘れていないのだ。面白いことに、ステーションから衛星の表面に向かっては、小さな構造物の集合が伸びていた。ステーションの中心部の巨大さに圧倒されていなければ、こうした小さな構造物の中にはそれ自体非常に興味深いものも見られた。ステーションの連なりはメインステーションから始まってカーブを描くように点在し、ディープコア採掘(Deep Core Mining)が支援するプラットフォームで終わっていた。ディープコア採掘のプラットフォームは、そのステーションの名付け親であるジタ4-4衛星の地表と接続するスペーステザーのハブとして機能している。ジタ4-4衛星の地表には、居住コロニーが繁栄していた。その間には二台の車両が競い合うように地表とディープコア採掘のプラットフォームを往復しているが、一台が来るともう一台は反対側にいるという具合に二台はすれ違い続けていた。

 

ステーション正面の巨大な壮観には時折花火が上がる

 しばらく私はステーションの外観とその周辺を眺めていたが、たっぷり時間を費やして景色を堪能した後、ようやくタワー管制室に船のドッキング要請を申請した。愛車の「Professor Science」はすぐに入港を許され、ステーションの奥深くに収まった。しかし中に入ってもなお、ステーションがどれだけ巨大であるかひしひしと感じられた。ドッキングプラットフォームを見ると相当遠くまで続いており、まるで圧倒されるためだけに圧倒されているのではないかと思わせるほど、ステーションがいかに巨大であるか物語っていた。こうした(私にとって)広大な都市を調査する際に自分がどういう方法を取ってきたかはさておき(それでも、今振り返ってみると、どう考えても中途半端な調べ方でした)、私は果てしなく続くように見えるその地を探検した日々を思い出していた。そして少年時代に見た大都市と同じように、改修されたジタ4-4を奥深くまで探索しようと踏み出せば、そこには贅沢な時間や、楽しいこと、そして冒険が待っているという確信があった。


翻訳:渋丸

 

0 件のコメント:

コメントを投稿