2021年1月26日火曜日

イヴ破戒録生産職  第一話「それは沼の入り口」

(※脳内でカイ●風に読んでいくと、雰囲気がでるらしいよ)


 ―――資金繰りが、辛い。



気付けば手元には、わずか3mしか残っていない。



安い装備のフリゲートが1隻、買えるか買えないかという心許ない金額だ。



おかしい、数日前まで手元には1B近い資金があったはず。



それがどうしてこんなことになってしまったのだ・・・。







金策の一環として生産業をに手を出した。




最初は、薄利多売なうえ輸送の手間も多い商品を作るために働き蟻のように運び、作り、また運び、売ることで満足感を得ていた。


時給にして100kISKくらいだろう。


最初は、生産なんてそんなものだろうと思っていた。


キャラクターを複数用意して、生産ラインを拡充する事で薄利多売でも利益が出るようにする。

自作のExcelシートと睨めっこして、マーケットの原料にギリギリの値段で買い注文を入れる。

皆、そのようにしてなんとか利益を出しているのだろう。

そうに違いない



世の中はそういう風にできている。


確かに、NewEdenを生きてきた先達のブログには、1ヶ月で数十Bill稼いだだの、短期の売買で数百m稼いだだのという話がごろごろ転がっている。


ハッ、そんなものは夢物語だ。


数年前の情報網が未発達なインターネットならいざ知らず、今の情報化社会でそんな儲けを叩き出せるわけがない。


そういう話はどうせ、外聞を気にして数字を盛ってる嘘吐き野郎が書いた創作だ。


だいたい、現実世界でも、“本当に旨い話”なぞ、ついぞ見たことがな・・・・・・ん


なんだこのアイテムは。


BPだけで数百m、素材を買うと100m単位でISKが消し飛ぶ・・・。


飛ぶ、が、売れれば、売れれば利益100mだ。


このアイテムを1つ作って売るだけで100mが手に入るッ・・・!


「世の中に旨い話などない」と考えていたさっきまでの自分はどこへ行ったのか。



「自分ならうまくやれる」



そういった根拠のない考えが自分の脳を支配した。


リスクを思索する間もなく、マウスを握った手から、カチッ、カチッと音がして、気付いた時には3枚の設計図が自分のアイテムハンガーに入っていた。


やってしまった。もう後戻りはできない。


良い。大丈夫。売れれば良い。投資。これはそう、投資なのだ。


自分にそう言い聞かせて。素材の購入ボタンも、押した。



もはや全財産に等しい、総額1B近い商品を戦々恐々としながらJitaまで運び、最安値で売り注文を入れた。


大丈夫だ。このアイテムは売れ行きも悪くない。今は人が少ないが、アメリカかヨーロッパのタイムゾーンで売れているはずだ。




しかし、数日経っても売れない商品を前に、自分は頭を抱えていた。。


原因は明らかだ。いつもいつも、自分より安い売り注文を出している輩がいるのだ。


輩に対抗すべく、安くない手数料を払って最安値に更新する事を繰り返しているうちに手元の資金が削られていった。


手元に残っているのは僅か3m。


認めよう。自分は失敗した。

今回自分がやった事は、金策ではなく、ただの賭博。投資ではなく投機だったのだ。


もう1日だけ置いて、駄目だったら引き下がろう。


そう思った矢先の事だった。次々と売れていく商品。手元に入ってくる、大量のISK。

どこかの富豪がまとめて買っていったのだろうか?富豪に感謝しなければいけない。


そうして手元に約1.2Bの資金ができた。


もう同じ轍は踏むまい。

そう考えた頭に反して、マウスを持った手は自然と高額なBPを探し―――


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