2025年3月5日水曜日

翻訳記事:C-J6MT戦争の歴史記念碑

 (原文:https://evetravel.wordpress.com/2021/09/12/a-history-of-war/


奇妙な形をした戦争の歴史記念碑
 率直に言うと、私はヌルセキュリティ(Null-Sec)の歴史に精通しているわけではない。もちろん、著名なコーポレーションやアライアンス、CEOたちの逸話を通じて、ある程度の歴史を語ることはできる。しかし、正直なところ、ヌルセキュリティで繰り広げられる争いには、あまり興味が湧かないのだ。こればかりは申し訳なく思う。すでに優れた歴史書は存在するので、詳細を知りたい方はそちらを参考にしていただきたい。

 読者の中には、まだ気付いてない方もいるだろうが――私が興味を抱く分野は狭い。しかし、それでもなお食べ尽くせないほどの歴史が、ニューエデン(New Eden)には広がっている。




逆光で見ると、記念碑の内部が赤く輝いているのが
はっきり見えるだろう。
 ところが、ヌルセキュリティの歴史に深入りするつもりはなかったが、その決意を曲げざるを得ない瞬間があった。例えば、近年建造されたモニュメントを取材するため、M2-XFEに向かう途中、思いがけず興味を惹かれるものを発見したのだ。実際、あれを見つけたのは幸運だった。


 私はヌルでの航行がまったくの素人というわけではない。ここでは油断は禁物だ。建造物に気を取られている間に、敵対的なカプセラが潜んでいるかもしれない。しかし、そのときだけは状況が違った。C-J6MT星系にジャンプした瞬間、私は警戒を解き、目の前に現れたものに心を奪われた。


 C-J6MTは、インスマターに入って数ジャンプほど進んだ場所にある星系である。Etherium ReachやScalding Passとの境界からも、そう遠くはない。New Edenの戦史に詳しくない私にとって、特に意識する星系ではなかった――少なくとも、その瞬間までは。




アイソメトリックに見てみると
独特の扇状のものや柱が確認できる。
 78-0R6側のゲートから次のゲートへとワープを開始した瞬間、Scientiaのセンサーに思いがけないものが映った。しかし、ありがたいかなワープ航行が開始され、例のものは瞬く間に視界から消え去ってしまった。面倒なことになった。ワープに突入すると、途中で止めることはできない。やむを得ず、目的地に到達した後、すぐに引き返した。クロークを展開し、再び78-0R6ゲートへ向かった。自分が何を見逃したのか、確かめるために。


 その地点に向かう途中、ふと疑問が浮かんだ。

「ここには、何か語るべき歴史があるのだろうか?」
「なぜ、この宙域に記念碑が建てられたのか?」



 だが、その答えはすぐには得られなかった。



記念碑の側面図。背景には星雲が広がっている。
 ワープが完了すると、目の前に巨大な記念碑が現れた。赤みを帯びた石造りで、全長数十キロメートルもの高さを誇る。78-0R6ゲートから数百キロ離れた場所に位置し、その岩肌はまるで火山岩を削り出したような質感だった。

 その表面には溶岩のように脈打つ赤い輝きが灯っていた。Moleaにある「堕ちたカプセラの慰霊碑」と似たエフェクトだが、こちらのほうがやや明るい色合いだった。内部から脈打つ赤い光がこぼれ出し、まるで煮えたぎる溶岩が滲み出ているかのようだった。


 記念碑には、「C-J6MT」 の文字が巨大なフォントで刻まれていた。愛船 Professor Science と並ぶほどのサイズの文字だ。その周囲には、扇状の構造物や突起が無数に突き出ている。

 Auraに解析を依頼したところ、このモニュメントの正式名称は 「C-J6MT戦争の歴史記念碑」 だった。


 しかしこの建設者たちは、どうやら皮肉について一家言あるらしい。

 なぜなら、どれだけモニュメントをスキャンしても――そこに刻まれてあるべき歴史は、何一つ語られてなかったのだから。



C-J6MTにおける悪名高き激戦、および、その戦列に加わり、剣を交え、鍔を競り合ったすべての者たちを称えて。

(Monument honoring the notorious sieges and violent battles in C-J6MT and all those involved or impacted by these events.)



 これは……大いに役立つ解説じゃないか。

C-J6MTは、ニューエデンの歴史において重要な役割を果たしてきた。

 どうやら私は、最近の建造物に慣れすぎていた。近年建造された記念碑なら、その歴史や背景が詳細に記されているものだ。しかし、この碑文はどうだろう。C-J6MTで起きた戦いが、ニューエデンの歴史にどのような意味を与えたのか、何も知りようがない。



 幸いにも、GalNetやその他の情報源を調査したところ、C-J6MTの歴史を理解するための手がかりが得られた。



 事件はYC108年まで遡る

 この地は、レッドアライアンス(Red Alliance)が最終決戦を迎えた古戦場だった。



記念碑の外壁に刻まれた風化の跡に注目。
遠方には、78-0R6へのゲートが赤く輝いているのが見える。

 YC105年、CONCORDが独立カプセラの活動を承認すると、レッドアライアンスは急速に勢力を拡大し、ヌルセキュリティの広大な領域を掌握した。しかし、その急成長は多くの敵を生み、「南部連合(Coalition of the South)」と呼ばれる強大な対抗勢力が結成された。

 支配地域を広げすぎたレッドアライアンスは、次第に防衛が困難になり、圧倒的な敵軍に追い詰められていった。ゲリラ戦術で戦線を維持しつつも、いずれ消耗戦では生き残れないことを悟った彼らは、戦況を覆す決戦の場を求めた。そして、最後の砦として選ばれたのが C-J6MT だった。

 ここに拠点を築いたレッドアライアンスは、南部連合の包囲を迎え撃つ準備を整えた。

 そして、ついに決戦の火蓋が切って落とされた。


 戦力比は4対1――圧倒的な劣勢だった。しかし、背水の陣を敷いたレッドアライアンスは、決して屈しなかった。わずか3日間の戦いであったが、彼らは南部連合の猛攻を食い止め、存亡の危機を脱した。



この遠景のショットでは、記念碑が星を背景に小さなシルエットとして映し出されている。

 その後もC-J6MTは、レッドアライアンスとその分派にとって象徴的な地となった。その後、数多くの戦いがこの宙域で繰り広げられたが、やはり最も象徴的なものは、あの包囲戦だったのだろう。

 劣勢を覆し、領土を防衛し抜いた戦歴は、パイロットたちとこの星系の間に、単なる所有権を超えた精神的な結びつきを生み出した。時が経ち、所有者が変わろうとも、この星系を支配する者たちは、ここで戦った者たちの意志を受け継ぎ、「この地を守り抜く」との決意を新たにしてきた。



 この記念碑を後にする際、私は自らの無知を恥じた。レッドアライアンスの包囲戦の存在は知っていた。だが、その戦場が、今まさに自分がいるこの静かな宙域だったとは思いもしなかった。



 今、改めてヌルの歴史を振り返る時が来たのかもしれない。

 この無法地帯に築き上げられた帝国を。その衝突によって生み出された、数多くのドラマを……。





基本情報:

  • 名所: C-J6MT戦争の歴史記念碑
  • システム: C-J6MT
  • セキュリティステータス: 0.0
  • リージョン: Insmother
  • 潜在的な危険:
    C-J6MTは0.0宙域の奥深くに位置しており、複数の異なるアライアンスの領域を経由する必要があります。彼らは「青(友好関係)以外は撃つ(Not Blue, Shoot It)」のプロトコルを採用している可能性があります。
    0.0宙域から帝国領域へ移動する際には、ゲートキャンプ(ワープ妨害バブルを含む)が頻繁に確認されており、その他のゲートにも設置されていることがあります。
    慎重に行動することを推奨します。

翻訳:渋丸



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