2021年7月19日月曜日

翻訳記事:Battle of Vak’Atioth(Vak’Atioth大戦跡地)

 (原文:https://evetravel.wordpress.com/2021/05/23/battle-of-vakatioth/)

 

ジョビの研究基地に、アマーの船の残骸が迫っている

宇宙で起きた最初期の話の中でも、子供の頃に読んだVak’Atiothの大戦は興味深く覚えている。最初はその戦いについて断片的に聞きかじるだけだったが、後に母が大戦について書かれた(私の年頃にぴったりの)歴史書を与えてくれた。数週間後、私は本の内容をそらで言えるくらい読み込んだものだ。「自分はその本に魅了されてカプセラになった」と言ってしまうのは、さすがに大げさかもしれない。だが、大戦の記録が子供時代の私に与えた衝撃というのは、Gallente Primeの外の世界で起きる出来事に私を駆り立てたと言っても、誇張にあたらないだろう。Vak’Atiothの大戦は、単にMinmatar(ミンマター)反乱の直接の引き金になっただけの出来事ではない。この大戦は、Jove(ジョビ)の船をとりまく多くの謎を浮き彫りにした事件だった。一体どうやって、彼らは強大なAmarr(アマー)帝国を完全に圧倒したのだろうか? 彼らの船には、一体どんな秘密が隠されているのだろうか?

 

この戦いで失われたジョビのフリゲート艦は、いくつか鉄くずが残されるのみだった

カプセラのライセンスをすべて取得し終えて、宇宙を旅する自分の船を調達したとき、真っ先に飛び込んだヌルセキュリティ空間のひとつが大戦のゆかりの地だった。現在、そのシステムはシンプルにAtioth(アティオス)と呼ばれている。長年私は、かつての戦場を自分で訪れたいと憧れつづけ、子供時代から私を虜にするジョビの船を自分の目で確かめたいと願ってきた。しかし、船で航行可能なエリアにはどこにも戦場跡地がないと知り、非常に落胆したものだ。帝国が自身の最も悲惨な敗戦の記録を隠しているのか、それともジョビが船に隠されたテクノロジーを秘匿しようとしているのか、またはNew Eden全体を我々カプセラの影響から守ろうとするCONCORDの綿密な計画の1つなのかは分からない。Vak’Atiothの大戦は、長らく世間の目から隠されていた。それでも私は諦めきれず、自分が何か見逃している可能性や、誰かが戦場跡地へ通じるルートを発見していることを期待して、数年ごとにこの地を訪れていた。

 

アマーの戦闘グループの残骸

その後、CONCORDから歴史的大戦の現場がついに一般公開されたとの発表があったとき、私がいかに興奮したかご想像いただくのは容易いと思う。だが最近いつも思うのだが、私がヌルセキュリティの奥深くに足を運ぶのが最も難しいタイミングを見計ってCONCORDは発表を出しているのではと疑うくらい、多忙な時期に限って嬉しい知らせが届く。それでもどうにか惑星生活の責務を片付けて、おなじみのアティオスへ通じる航路を急いだ。子供の頃から憧れた歴史的戦場を一刻も早く見たいあまり、足が遅くて確実なScientiaではなく、より高速なProfessor Scienceに乗ろうかと真剣に悩んだくらいだ。ScientiaTenguクラスの船だが、危険なヌルセキュリティ空間を航行するならProfessor Scienceよりはるかに適している。結局、常識的な考えに従って安全なTenguクラスの船で出航したが、ジャンプゲートからジャンプゲートへ飛ぶとき、少しでもペースを上げるよう静かに船を急かした。

 

すぐに私は、現場に着いた。K-IYNWからアティオスへ通じるゲートをくぐり、Scientiaに搭載されたスキャナーを回すと、現れたビーコンには待ち焦がれた名前がはっきり書かれていた。「The Vak'atioth Battlefield(Vak’Atioth大戦跡地)」。私は船体の向きを適切な方向にアラインさせ、慎重にワープエンジンを起動した。途中、ワープ妨害バブルに捕まるトラブルはあったものの、バブルはすぐに崩壊して五体満足の状態で目的地に到着した。

 

母艦の超兵器によって破壊されたアマーの戦艦

現場に着いてまず目についたのは、静かにたたずむJove Observatory(ジョビ天文台)の外観だ。今でこそ我々はこの手のステーションをよく見知っているが、長らくきわめて深い謎に包まれた存在だった。ステーションの周りにはアマーの船の残骸が群れをなして漂っており、かつて黄金の無敵艦隊と謳われたフリートが、どれほど被害を受けたか今に伝えていた。だが私は、何もアマーの船の残骸を見に来たわけではない(この手のスクラップは、最近あり余るほど手に入るようだが)。私はすぐさま、残骸の中にジョビの船がないか探し始めた。だが残念なことに、伝説に名を遺すJoveの船として見つかったのは、いくつかのねじ曲がった鉄くずだけだった。快速を誇るジョビの船は宇宙の過酷な環境の中で風化したか、あるいはとっくの昔にアマー・CONCORD・ジョビ・Angel Cartelや、他の謎めいた勢力によって略奪されてしまったのだろう。つややかなジョビの艦船をこの目で見る夢は、叶わなかった。

 

次は何をしようか思案しながらローカルビーコンを調べていたら、データバンクから驚くほど詳細な説明が飛び出してきた。

 


 

Vak’Atiothの大戦は、アマー-ジョビ戦争において両陣営が衝突した最も重要な戦闘です。西暦23216(YC20)Vak’Atioth(現在のアティオス)システムで戦闘が起き、アマー海軍200隻とジョビの母艦率いる分遣隊が衝突しました。戦闘は帝国側の大敗に終わり、広域に損失を残しました。当時、この戦闘はNew Edenの歴史上最大規模の戦闘として記録されました。

 

事件のきっかけは、帝国が自国の威信を示すため、小規模なジョビの研究基地のみが点在する国境沿いのシステムであるVak’Atiothを攻撃する決定を下したことが始まりでした。アマーは数週間に渡り、システムの所有権と「神の意志」による権利の正当性を主張するメッセージを発信しました。

 

しかし帝国側の宣伝行為は、かえってアマーを迎え撃つ準備をジョビに促すことにつながりました。アマーの艦隊は主に戦艦や重巡洋艦で構成されており、支援は手薄で、停泊した状態の艦隊は無防備でした。

 


ジョビはこれに対して、少数精鋭のフリゲート級艦船を送り出しました。アマー側は停止したジョビの船を1機撃墜したものの、その間に他のジョビのフリゲート艦は最高速度に達し、アマー艦隊の動きを封じました。直後、ジョビの母艦が戦場に出現。New Edenでも他に類を見ない巨大な古代艦には、最も新しく最も破壊的なジョビの兵器が搭載されていました。この最新鋭の兵器は、アマーの戦艦を一撃で完全破壊する威力を秘めていました。

 

アマーの艦隊はジョビのフリゲート艦に身動きを封じられ、巡洋艦の長距離砲と母艦のdoomsday weapon(終末兵器)によって一隻ずつ潰されていき、大混乱に陥りました。指揮系統は混乱し、一方でアマーの軍法は前線の戦力に降伏も撤退も許しませんでした。

 

実際の戦闘はわずか6時間ほどで終結しました。アマーの戦力はほとんど壊滅したものの、ジョビ側は1/3の戦力を失っただけでした。

 


ジョビに惨敗したこの出来事は、帝国に大きな衝撃を与えました。すぐさま報復戦力が再編成され、ジョビのフリゲート艦に有効打を与えるために異なる戦術を用いた2度目の攻撃が計画されました。一方、ジョビは国境沿いのシステムから撤退し、防衛拠点に戦力を集中させ始めました。

 

しかし、実際にはジョビとアマーの2度目の衝突は起こりませんでした。直後、これを好機と見たミンマターが蜂起し、Gallente(ガレンテ)連邦内のミンマター同情派の後押しを得て大規模な反乱が発生。帝国はすぐにミンマターの対応に注力し、急遽ジョビと平和条約を結びました。

 

Vak’Atiothの大戦によってジョビ帝国は無敵の大国との立場を獲得し、これ以降、4大国や他の勢力はジョビに対して軍事的衝突を控える動きが広まりました。

 

 

私は、放棄された研究ステーションも調べてみることにした。てっきり他の放棄されたジョビ天文台と同じような説明が出るとばかり思っていたが、驚くことにAuraはいくつかの追加情報をもたらしてくれた。

 


 

この朽ち果てた残骸は、かつてジョビの研究前哨基地として使われていました。今となっては、アマーの攻撃をきっかけにVak’Atiothの大戦が始まる以前にジョビがここに居たことを示す、唯一の歴史的建造物です。

 

前哨基地は無傷で大戦を生き延びましたが、直後にジョビ帝国は国境沿いのシステムから撤退したため、この前哨基地も使われなくなりました。最終的にジョビ帝国は、自国とNew Edenを結ぶゲートの接続をすべて断ち切りました。この施設と同様に、放棄された前哨基地はメンテナンスシステムが崩壊しているため徐々に風化が進行しており、いわゆる「ナノロット(注記:微小レベルの腐朽)」状態へと崩壊していくでしょう。一方、海賊やその他の突発的な勢力が放棄された施設を略奪するため、不安定な防衛システムに無謀な挑戦を仕掛けることもあります。

 

 


今回の旅では、残念ながらジョビの船をこの目で見る長年の夢は叶わなかった。(もちろん鉄くずの状態ならジョビの船は見つかるが、いくつか破片を見たところで、私の夢が達成されたとはとても感じられなかった。また言うまでもなく、戦場跡地にジョビの母艦は残されていなかった)だがひとつだけ、子供の頃から抱く夢が叶った出来事がある。私は文字通り、歴史が誕生した地を自分の船で飛んでいた。ジョビの船はいまだに私にとって大いなる未知の存在だが、私が今いる場所、アティオスIの上空を、かつて彼らも自由に飛び回っていた。その事実に変わりはない。いつの日か、私も本物のジョビの船を目撃するときが来るかもしれない。だがそれまでの間、また違った夢を叶えることもできるのだ。

 



 (翻訳:渋丸)

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