(原文:EVE Travel - Massacres at M2-XFE Monument)
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優美なカーブを描くM2-XFEの記念碑 |
以前も話したことがあるが、私が愛しているのは四大国やCONCORDを取り巻く政治ドラマである。その一方で、カプセラたちが築いた帝国については、もはや意識の片隅にすら留めてこなかった。
こうしたヌルセクの巨大勢力たちは、ありとあらゆる協調、団結、戦争、そして裏切りを繰り返し、『その界隈』では星々をまたいで話の種となっている。カプセラたちは、今日はたとえ味方だとしても、ある日突然、起こるべくして起きた裏切りをきっかけに、翌日には無慈悲に潰し合うことになるかも分からない。
こうした内戦や戦争は、待てど暮せど、終わりが来たという知らせは来ない。しかしその混沌こそが、パイロットをアライアンスに繋ぎとめるコンテンツになるのだから、組織においては重要らしい。もっとも、その政治ドラマを追いかけ続けるのは、ほとほと骨が折れるものだ。
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モニュメントの近影 |
とはいえ、こんな私にさえも届いている知らせがある。ヌルセキュリティを飲み込み、果てしなく続く戦争――その最新章が、すでに火蓋を切っている。
それはひとえに、私が長らく購読しているカプセラが報じた、優れた記事のおかげでもある。それと同時に、ヌルアライアンスたちが示した、異様な熱気のせいでもあった。彼らはNew Eden史上、最大の会戦を起こしたかと思えば、すぐさま“記録更新”とやらに向けて決意を固めたようだ。
今回の戦争も、まさに同様の記録更新劇が繰り返された。要点だけを簡単に述べるが――騒動の渦中には、またしてもインペリウム(旧Goonswarm Coalition)の姿がある。これと対峙しているのは、PAPIあるいはPandaFamと呼ばれるアライアンス連合である。
この戦争は、現在、二年目に突入しているが、戦況はやや膠着しているようだ。しかし、戦局が活発に動いていた頃、M2-XFEでは両者の命運をかけた大規模な戦闘が幾度となく繰り広げられた。このシステムで最終決戦が始まったYC123年初頭までに――20,000隻以上の艦船が灰に帰し、450隻を超えるタイタンが沈んだ。
そんな中、M2-XFEを舞台にした宇宙規模の大戦――その中でも、New Eden史上最大規模となった例の激戦――に対して、「天上の方々」は、とある決断を下した。この星系で失われた、無数の命と艦にふさわしい記念碑を建てるべきだと判断したのだ。(もっとも、最近の戦局を見るかぎり、「史上最大規模」という記録も、そうそう長く続くとは思えない)
そして、記念碑の制作を任された彫刻家たちは……いつものことながら、期待以上の仕事で応えてみせた。
この戦いの全貌を語ろうにも、私の力ではどう言い尽くしたらいいやら分からない。代わりにAuraによる碑文解析をご紹介したい。私よりもはるかに的確に、激戦の全容を描き出してくれている。
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YC122年末からYC123年初頭、キープスター級シタデルを巡る全面衝突が勃発した。当時、その会戦はNew Eden史上、最も激しく、最も重い犠牲をともなった戦いとして記録された。この記念碑は、当時の会戦に参加した、数千ものカプセラを称えて建てられたものである。
YC122年、New Edenの南部および西部に位置するヌルセキュリティ宙域は、『The Imperium』と『PAPI』と呼ばれるカプセラ連合同士の大規模な対立に揺れていた。
同年末、戦争の主戦場はデルヴリージョンに移行。PAPI連合軍は、インペリウムの本拠地へと侵攻を本格化させた。
10月、PAPIはFWST-8システムにて、橋頭堡――攻撃の足がかりとなる拠点――を確保する作戦を試みた。これにより、大規模な交戦が勃発。この戦いは、当時としては未曾有の激戦として記録された。
しかし――その記録が保たれたのは、わずか3か月にも満たなかった。
12月末、デルヴでの戦闘は、M2-XFEシステムに焦点が移った。PAPI連合はこの地に集結し、インペリウムが設置したキープスターを破壊するべく、執拗な攻防戦が始まった。
YC122年12月30〜31日、キープスターのアーマータイマーを巡り、最初の全面衝突が勃発。戦場には、両陣営を合わせて5,158名のパイロットが集結した。双方からスーパーキャピタル級の艦隊が投入され、シタデル周辺では次々と船が爆発を繰り返した。両陣営の戦力は、ほぼ拮抗していた。
一夜明け、戦火が晴れたとき――カプセラ艦3,404隻が沈没し、そのうちタイタン級は257隻が撃墜されたことが明らかになった。被害総額は、両陣営あわせて29 Trillion ISKを上回った。
数日後、第二次会戦には、さらに多くのカプセラが戦場に駆けつけようと試みた。その結果、かの悪名高い一幕を迎えることとなる。
YC123年1月3日、この日、M2-XFEにはEVE Onlineの歴史上、最多となる6,739名のパイロットが同システムに参戦した。これに加え、数千のカプセラがジャンプゲートをくぐろうと殺到した。
これほど前例のない規模で、時空を歪めるワープドライブ搭載艦が密集したことで、システムそのものが大きく軋んだ。時空間異常が多発し、宇宙全体が悲鳴をあげるほどの過負荷が生じたのだ。
この時空間異常により、M2-XFEにいたすべての艦船は、予想外の混乱に陥った。しかし、防衛側のインペリウムは、比較的軽微な被害ですんだ。彼らは幸いなことに、PAPI艦隊よりも先に現地に到着していたのである。最も激しく時空間異常が起きた時間帯に、ジャンプドライブやスターゲートを使用する必要がなかったのだ。
結果として、インペリウムは大きな勝利を収めた。
攻撃側は、ジャンプゲートで混乱地帯に突入したものの、彼らの多くは進入直後に迎撃され、甚大な被害を被った。さらにはインペリウム軍の封鎖により、生き延びた船艦の多くがシステム内に囚われることとなった。
M2-XFEのキープスターは、このとき、かろうじて命脈を保ったのである。
第二次会戦の後、インペリウムはシステム内に移動式ワープ妨害機を展開し、徹底的な哨戒行動を開始した。当該システム内に釘付けにしたPAPI陣営のスーパーキャピタル艦を一隻でも多く足止めするためであり、それによって戦禍に見舞われたデルヴリージョンにおいて、戦略的なアドバンテージを得るためである。
PAPI側がスーパーキャピタル艦を救出するべく作戦を繰り返す一方で、システム内の他の構造物を巡り、両陣営の争いは続いた。
YC123年1月27日、本格的な救出作戦が敢行され、一部の艦はインペリウムの封鎖を突破した。この戦闘は、キャピタル艦およそ450隻、タイタン級6隻が犠牲となる凄惨な戦いであった。
2月1日、PAPI陣営はNJU-QVコンステレーション全域にわたり、数千人規模の大規模な作戦を展開し、M2-XFEのインフラストラクチャー・ハブ(IHUB)の掌握に成功した。この成功を足がかりに、PAPIはゆるやかに次の段階――テネブレックス・サイノジャマーの稼働に向けた地盤づくりを進めていく。ストラクチャが設置されれば、インペリウムの防衛軍はシステムに戦力を送り込むことが難しくなる。(訳注:テネブレックス・サイノジャマーとは、ストラクチャの一種であり、起動することで、システム内でサイノシュラルフィールドが展開不可となる妨害フィールドを発生させる)
そしてYC123年3月7日――PAPIのサイノジャマーがオンライン状態に入った。これを受け、インペリウム陣営は戦力の大部分をM2-XFEから撤退させ、取り残されていたPAPIのキャピタル艦は、ようやくM2-XFEから解放された。
そのわずか5日後――YC123年3月12日。
あらゆる流血の原点となったM2-XFEのキープスターが、PAPIの手により、破壊された。
総括すると、M2-XFEを舞台にして巻き起こった戦闘は――YC122年末からYC123年初頭にかけて続き、20,000隻を超える艦、450隻以上のタイタン級が犠牲となった。
第一次会戦は、一度の戦闘における船の損害額が、New Eden史上最高額を更新した。
第二次会戦は、FWST-8における記録を塗り替え、同一システムにおけるカプセラの参加人数としては、過去最高規模の戦闘となった。
二ヶ月以上にわたる激戦の果てに、戦禍の火種となったキープスターは破壊され、インペリウムの艦隊は、ほど近い本拠地である1DQ1-Aへと戦力を再集結させている。
本記念碑が建設された現時点において、PAPIとImperiumはさらに大規模な紛争を繰り広げている。
この対立が最終的にどのような形で終結するのかは――神のみぞ知るところであろう。
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タワーの頂点から昇る日の出 |
……ふう。
この記念碑そのものが、まさに息を呑むような美しさである。
全体の構造は、漆黒の輝きを帯びた黒曜石のような石材によって築かれている。
中央部には、湾曲しながら絡み合う塔が優美な弧を描きつつ、放射状に立ち並ぶ。その佇まいは、まるで黒曜石の大聖堂に設えられた巨大なパイプオルガンのような風格を漂わせている。
構造の中心からは、脈打つように青白い光が放たれ、それが外縁へ向かって静かに広がっていた。
オブジェの端へと目をすべらせると、塔群が次第に低くなっていくにつれ、新たな、平坦な構造体が外縁から張り出し、やがて両端に向けて鋭く尖っていく。
もしも中心部が、哀調を帯びた旋律を奏でる荘厳なオルガンだとするならば――その外郭は、まさに今、羽を広げ、獲物に襲いかからんとする猛禽の姿だ。
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オーブからほとばしるエネルギーの近影 |
この記念碑の中央に据えられているのは、ひと目見ただけでは、ただ青白いエネルギーがはじける球体のように見える構造物だ。
だが側面から眺めてみたとき、その形が実は涙滴状であることに気づかされた。
鋭く尖った先端が外殻構造へと滑らかに接続され、内部では無数の光が渦を巻くようにして終わりなく流動している。
おそらくこれは、あの戦いで解き放たれた時空を軋ませるほどのエネルギーを象徴したものなのか――あるいはM2-XFEに開いた裂け目の、ほんの一片でもこの球体に封じ込めた、という表現なのかもしれない。
いや、ひょっとしたら……ただ単純に「格好良いから」という理由で選ばれた意匠なのかも分からない。
正直に言えば、私は芸術家の意図を読み解くのが、昔からあまり得意ではないのだ。
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記念碑は太陽の番兵であるかのように佇んでいる |
私は、かなりの時間をかけて、この記念碑をあらゆる角度から眺めていた。
優美に湾曲する建築と、ただただ圧倒される荘厳さ――この場に立ってみると、その美しさに息を呑まずにはいられない。
読者の中には、先日までの私のように、「NC」と「NCdot」が全くの別物であると知らない方もいるだろう。さらには「NCdot」と「NC.」の区別など、どうでもいいと思われる方もいるかもしれない。たとえそうだとしても――実際に足を運んで、この光景を目の当たりにしてみてはいかがだろうか。
New Edenに刻まれてきたカプセラの歴史は、それを詳しく知らずとも、こうして立ち現れる記念碑を前にすれば、確かに感じ取ることができる。
果てしない抗争の果てに生まれた、荘厳で壮絶な造形の数々――。
この世において、血と鉄の匂いにまみれた戦争ほど美しいものは、そうそうないのかもしれない。
基本情報:
- 名所: M2-XFEでの虐殺記念碑
- システム: M2-XFE
- セキュリティステータス: 0.0
- リージョン: デルヴ(Delve)
- 潜在的な危険:
M2-XFEは0.0宙域の奥深くに位置しており、複数の異なるアライアンスの領域を経由する必要があります。彼らは「青(友好関係)以外は撃つ(Not Blue, Shoot It)」のプロトコルを採用している可能性があります。
0.0宙域から帝国領域へ移動する際には、ゲートキャンプ(ワープ妨害バブルを含む)が頻繁に確認されており、その他のゲートにも設置されていることがあります。
慎重に行動することを推奨します。