□はじめに
EVE onlineにはポートレート撮影という機能があります。簡単に言えばツイッターのアイコンのようなものです。ゲーム内でチャットをすればこの画像がアイコンとして登場し、第一印象を決める重要なキーとなります。であるならば、第一印象は良いに越したことはありませんよね。ポートレートはなるべく素敵にしておきたいというのが誰しもの願い。誰だってそうしたい、私だってそうしたい。ですがこれがもしツイッターであれば神絵師の神イラストを乗っけておけば簡単にクリアできるだろうに、EVEのポートレートはそれを許しません。ポートレートに撮影できるのは全て、EVE onlineに存在するもののみ。しかも、あなたの所有物のみ。なのにカメラに向かってピースのポーズは未実装。無限に自由なようで無限に不自由。あー、やきもきする。ポートレートを編集しているとき、誰しもそう感じたりしないでしょうか。今回ご紹介するのは、そんな「無限に自由で無限に不自由」なEVE onlineのポートレートを、簡単・手軽でそれでいて自分でも納得のいく仕上げにする方法をご紹介します。平日の夕方過ぎに挟まるお掃除の裏技コーナーで
「ガンコなお風呂の水アカは、実はキッチンにあるものを使えば一瞬でキレイになるんです!」といったトーンの話がこれから始まるんだと思ってください。
□なぜポートレートの極意はプリクラにあるのか?
話は少しそれますが、これを読んでいるあなたはプリクラを撮ったことがありますか? 私はほとんどありません。実は正直苦手です。プリクラが苦手です。なぜならプリクラの撮影は常に時間との勝負です。短い時間でいくつもシャッターを切られ、どんどん撮影が進んでいきます。途切れないカウントダウン、明滅するフラッシュ、ほとんどパニックに陥りながらもポーズをとってようやく撮影が終わってお絵かきコーナーに進むと、仕上がってくるプリクラに写る自分はいつも同じポーズ、同じ顔、ちょっと角度が変わっただけで変化はなし。嗚呼、あんなに祈ったのに今度も奇跡は起こらなかった……そんな苦い思い出しかありません。プリクラコーナーには必ず、プリクラシートを仲間で分け合えるようにとハサミを設置してある共用コーナーがあります。自分もそこでハサミを借りて、プリクラを人数分に分けようと思ったときでした。最後のハサミが目の前で他の子の手に。アンラッキー。仕方なく順番待ちしてぼんやりとその子のプリクラを眺めていると、
「これすごくいい!」「次は三人でコマネチやろうよ!」「やだよー、他のポーズにしようって!」「ほらあのノート見せてー」「何かいいのあったはずだよ!」
一人がカバンから取り出したノートの中には、えんぴつで書いた棒人形が四角い囲いの中で様々なポーズをとっていました。プリクラのネタ帳です。彼女たちはあらかじめ、どういうポーズをとろうかということを、棒人形という形でメモしていたのです。なるほどこれなら何もアイディアが浮かばないときにも、ぱっと開いたページでメモを見てさっと決めてしまうことができる。
今回ご紹介するポートレートの裏技というのは他でもありません。プリクラのネタ帳。これです。
「ポトレを簡単に見栄えよく、それでいて自分でも納得のいくものに仕上げたい」
と考えるならば、ポトレを編集する第一ステップでポートレート編集画面を開いてはいけません。まずはそれを閉じてください。ポトレを編集しようと思い立ってすぐ編集画面を開くのは、プリクラでポーズについて全くのノープランで飛び込んでいく私と同じ状態です。
何故ならポートレートは、プリクラから撮影の時間制限を取り払ったものだと考えればだいたい似たようなものです。固定された被写体、限られたポーズパターン、動く範囲の決まったカメラアングル。思わぬところに不自由さがあります。その一方で、EVEのポートレートにはプリクラにはない別次元の不自由さが加わります。素材が無限に自由すぎるんです。メイク、ライティング、背景パターン、購入次第で様々なアパレルが目白押し……そこに追い打ちをかけるように、キャラクターの骨格や顔立ちを整形し直すことができるアイテムまでもが存在し……一度ポートレートをいじってみた人なら誰しも、そのバリエーションの広さに絶望したはずです。それら全てを全部こだわって調整しようとしたら、大変なことになる……。途方に暮れて、そっとポトレ編集画面を閉じたことが誰しもあるはず。
だからこそ、今回ご紹介したいのはこれなんです。まずはポトレ編集画面を閉じて、ポトレのメモ帳を作ることを第一ステップにする。これなんです。
□ポトレのメモ帳の作り方~実践編~
ここからは具体的なメモ帳の作り方について説明します。どういうことをメモしておくと役立つのか、どういうところに気を付けたいのかという話になります。もちろん、ここにはない要素を加えたり、逆に不要だと思えば省略することも適宜おこなってください。最終的には自分でメモを見たときに、ポトレを編集するために必要なネタが十分そろったと納得できるところがゴールです。
0、テーマを決めよう(※最重要)
ここには最初、何でもいいのでざっくりと方向性を殴り書きしておきましょう。明るい雰囲気にしたい、クールに決めたい、かっこいいポトレにしたい。何でもいいです。
書き終わったら、次の項目に進んでください。
そうです、ざっくりとテーマを決めたら、次の項目に進んでください。各項目をメモしているうちに「ここだけは譲れない!」というポイントが見つかったら、忘れずにここにメモしておいてください。あるいは「どうしよう……」と迷ったときは、この項目にまとめたメモを読み返して基本方針を思い出してください。
ポトレのテーマは、最初のうちざっくりと方針だけをつくっておいて、各項目のメモを充実させていくうちに次第にテーマも明確にさせていくくらいでいいです。
私の場合、テーマを考えるとき、キャラクターの顔立ちの中で、一番気に入っているパーツや長所をここにメモしておきます。この長所が隠れてしまわないようにするためです。
例えばこのキャラクターは鼻ぺちゃだけど、小さなあごが童顔でかわいいと思ったら、そうメモしておきます。これをメモしておけば、次の項目でポーズを決めるとき、「じゃあ、顔からあごにかけてのラインがきれいに出るアングルを探してみよう」という考えにつながります。
例えばこのキャラクターは老け顔だけど、そこが渋くてかっこいいポトレにしたいと思ったら、そうメモしておきます。「それならハードボイルドものの映画みたいに、重厚な色の背景や陰影の強いライティングを使ってみようかな」、という考えが浮かぶことにつながります。間違ってもピンクの花柄の背景や花魁のような化粧をぶちこむ可能性はなくなります。
「譲れないポイント」「ここ重要」と思ったら、ここの項目に書き残しておいてください。
1、ポーズ(構図)を決めよう
ポーズを決めてください。棒人形で構いませんので、実際に四角の中にポーズの候補を挙げてください。ノーアイディアなら他の方のポトレを参考にしてみて「いいなこれ」と思ったポーズをメモしてください。
様々なポーズを見ているうちに「このポーズ気に入った!採用!」とひとつに決まることはそうそうありません。大抵は数あるポーズの中からどれにしようか選択することになります。
悩んだら項目0に自分が書いたメモを読み返してください。そして項目0のテーマに一番合致するポーズに決めましょう。
2、使用するアパレル・欲しいアイテムを決めよう
キャラクターが着用する服・アイテムを決めてください。いくつかの候補を箇条書きにして挙げてみてください。
項目1でポーズの候補がいくつかメモされているならば、「その範囲に写らないアパレル・アイテム」は購入を見送ることができます。市場に出回る色とりどりの素敵なアパレルを、気に入ったもの全て買おうとしたら破産してしまいます。
アパレル市場を見ているうちに「この服がちゃんと見えるポトレにしたい」と思ったら項目1を修正しましょう。そして項目0に「このアパレルがポイント」であることを書き加えておきましょう。
3、メイクの方向をざっくり決めよう(なんとなくでいい)
メイクの方針を決めてください。
悩んだら項目0に立ち返ってください。
4、背景・ライティングをまあこんな感じにしたいと決めよう(ぼんやりでいい)
背景・ライティングの方針を決めてください。
悩んだら項目0に立ち返ってください。
……以上です。
□おわりに
ここまで真面目にメモ帳の作り方を説明してきましたが(最後らへんはネタが尽きたんじゃありません、同じことの繰り返しになるから説明を省略しただけです、省略)、ですが実際はここまで完璧にメモを作成しておく必要はありません。あくまで「あなたがグッときたポイント」「ここは外せないと思ったチャームポイント」「どういう方向にしたかったという初心」といったものを書き残しておいてください。その重要なポイントさえ書き残してあって、何度でも読み返して思い出せる形に残しておけば、自分の納得のいくポトレに通じる道筋はそこにあります。この記事が全編を通して、解説が具体的なようで抽象的で、ざっくりとしているようで細かいところを気にするといった、非常におかしな総体になっている理由は他でもありません。私が解説を試みようとしているのは、「あなた」が納得するポトレを作成する方法をあなたが見つける方法を解説しようとしたからです。ここに解説された方法論は、全く無視してもらっても構いません。聞いたり聞かなかったりしてもいいです。自分でアレンジを加えたり削ったり自由にしてください。ですがここに書かれた方法を完璧に踏襲したところで、その結果に出来たポートレートを自分で気に入らないならば、そんなものは絶対に使わないでください。もしそういう結果を招いてしまったとしたら、私の説明が間違っているか、不足しているのが原因です。
余談になりますが、プリクラで使うポーズのメモ帳をつくっていた三人組は、ノートを囲みながらあーでもないこーでもないと、次に撮るプリクラで決めるポーズの相談に忙しいあまり、ついさっき出来たばかりのプリクラを切り分けることをすっかり忘れていたようで、その後ろでハサミの順番を待つ私が途方に暮れていることにはしばらく気が付きませんでした。
もし最高のポトレが完成して、その出来栄えに自分でも大いに納得するものが仕上がったとしても、書き残しておいたメモは捨てないでください。そして新しくポトレを撮影し直すときのために、ポトレのネタをこれからもいっぱい書き加えておいてください。そうすることで、読み返すだけでもわくわくするような、遊びのタネが詰まったメモ帳に育っていくはずです。あの小さな四角の中でさえも、様々なポーズや表情で遊べることを、プリクラ大好き三人組は楽しんでいました。そしてその中心には、えんぴつで書かれた棒人間が踊るメモ帳がありました。