2022年4月23日土曜日

EVE Onlineの値上げを考察してみる


そのニュースは突然だった。EVE Online値上げ。

さて、久々のBlogは価格についての批判、ではなく冷静に分析してみて値上げする要因、必要性を考えてみよう、というものだ。これは公式見解ではなくあくまで一個人の分析のため居酒屋の適当な戯言程度に思っておいてください。

今回、この記事を書くためにPerl Abyssの財務報告、CCP ParagonのQ/Aを引用しております。

居酒屋レベルなので推鼓などしてない。

-----

まず、CCPがリリースで述べている以下の文言の実現という点に注目しよう。

EVE Onlineの進化と成長に投資し続け、「EVEよ永遠に」のミッションを実現するため、既存のオメガおよびPLEXの価格を改定いたします。今回の調整では、制作費全般に影響を与える世界的な動向と長年のインフレを反映し、1か月の登録料(米ドル)を2004年以来初めて改定することになります。それに伴い、他の通貨にも影響を及ぼします。

つまるところ、EVEは現在の価格では製作費に関するバッファを持たせれない、 というお話だ。CCPの歴代の公開された財務情報をチェックしたところCCPの売り上げ事態は長いこと爆発的な変化をしていない。つまり、インフレが進めば収入が減っている、ということになる。

この点で考えれば減収ともいえるので値上げ要因の一つになっているだろうが、私はこのインフレが理由とは思っていない。だが、こんな序盤でそんなこと言いだしたら大変なので一個ずつ進めていこう。

一般的に値上げを行うタイミングというのはいくつかある。

インフレや世界的なコストの増加が起きている時期
本社のある国の税や法改正
決算など財務報告日程


今回の価格改定日はチェックしてみたところ、PerlAbyss(以下PA)の財務報告のリリース日程とかぶっていることから3つ目になる。
そうなると、この価格改定する必要があったのはなぜか?ということだ。CCPが更新して繁栄しているデータからすると、おそらくEVE Onlineのユーザーの大半は長期固定客で他のオンラインゲームと比較するとベテラン層が非常に強固であることは推察できる。

一方、PAのゲームは新規流動が中心であり、黒い砂漠、韓国オンラインゲーム事情から加味するとEVEのビジネスモデルと酷似しているが、顧客層に大きな隔たりがある。また、今回の価格改定で韓国オンラインゲームの一昔前のデフォルトといえる月額に近づけると短中期でみれば増益するが長期で見れば大幅減益することになる。ここはゲーム業界で銭勘定をしていてもしていなくても簡単にわかる話だ。

じゃあ、そんなことがわかってるのになんで改定したのか、ってところだ。
この改定の背景で一部のユーザーが語ってるのはPAの業績が振るっていない話だが、おそらくこのPAの業績が振るっていないこととCCPは然程関係がない。むしろ、CCPはそれなりに優良企業の部類に入るので見るべき点としては長期でみればCCPの増益するための成長と企業価値を高めることがPAにとっての最善だ。これは、何かあったときに子会社売却という道をつくるためにもCCPの資産価値を高めることは有用だからだ。

PAの財務報告を一通りみてみた。確かに収益が振るっていないようにもみえるが、ふるっていないというよりも波がある。赤字に転落していた時期も確かにあるが、全体でみれば既に損失分は次の財務報告分で帳消しできている数字だ。(勿論、会社経営の財務はそう簡単なものではないが、この業績を見る限り、安定である)





が、次の財務報告の数字をみるとPAの状況が若干不穏を感じるものがあった。


EVE onlineにはロシア/ウクライナなどの地域ユーザーの割合が多いという話がある。ウクライナ侵攻がEVE Onlineのユーザー数に影響を与えているのではないか?と考えた。
ロシア/ウクライナ圏が仮に全ユーザーの20%いたとしよう。この層がすべて消える、もしくはそこから2割か3割減少したと考えれば、収益は大きく目減りする。

世界的なインフレやエネルギー問題、物価の高騰をあわせれば全体の2~3割が消える可能性は非常に高い。
これを裏付けるかのようにCCP Paragonは公開Discordでウクライナ侵攻による影響が大きいことを認める発言をしたようだ。

そのタイミングで価格改定をしたわけだが、ではこれによってユーザー離れ起こすからCCPの収益は大幅に減るのではないか? という観点からみてみよう。

まず、一般的に価格改定をすると短期でみれば売り上げは減少するが、中長期でみれば増益することが基本となる。

が、このレベルの値上げとなると9割がた失敗する。いい例がNCSOFTが過去に運営していたネットゲームたちだ。あれらの多くは強気な価格設定で爆死を経験された方々だ。

唯一例外なのがリネージュとギルドウォーズなのだが、リネージュは先進性で売れ、ギルドウォーズはスタッフが元Diablo2スタッフでファンがいたことやesportsにあの時期から挑戦したこと(爆死したが)、あの販売方式とサーバー、プログラムなどが今の技術でみてもイカれてることから一般的なケースとして両方とも採用はできない。NCSoftのあいつらはネトゲの歴史でみても化け物ぞ。

月額課金制を採用して強気な価格設定を行ったゲームは大半が爆死。短期収益を確保してその後月額無料やP2Wに切り替えたりと販売モデルの変更を余儀なくされている。

失敗の前例があり、業界的にも悪手だといわれているこれを選ぶ、ということは何か別の狙いがあると考えるべきだ。じゃあ、それは何か?

CCP Paragonは非公式Discord内で急遽Q/Aを行い、いくつかのことを明確に答えています。

1、値上げの背景はウクライナ侵攻の影響があります(ロシアからの収入がない、といってるようです)
2、現在のビジネスモデルではゲームに多くの投資をすることが難しい
3、この値上げ幅に見合うだけのものをFanfesで発表する予定である
4、複数アカウントユーザーに対する割引は行いたいが、方法がわからない。また、それらを行うにしても資金が必要です。



CCP Paragonの回答からすると、CCPはビジネスモデルの限界を感じていたため、値上げかビジネスモデル変更は検討されていたものと思われます。
しかし、検討をしている段階でウクライナ侵攻の影響によりロシア圏からの収入を失い、赤字に転落、もしくは危険な状態に陥る未来が見えているのでしょう。今後の展望からも短中期でみても資金を一時的に稼いで新たなビジネスモデルの構築や開発に投資するという経営判断を下した可能性は高いように感じました。(PAも関与して韓国ゲームのビジネス手法を教えていると思います)

最も、CCP途中に述べたように企業としては優良企業の部類です。この宣伝、告知、判断などから色々別問題はありますが、それなりに検討したと思われます。(これを裏付けるだけのものが存在します)


総評

CCPを改めて調べなおしてこの企業の安定感は変態である。今回の選択は今までのCCPらしからぬと感じ取れるが、Fanfesや開発に対するなんらかの勝算を強くもっているものと考えられる。

ただ、値上げの額などについては音声などから十分な検討によるものではないことを感じ取れた。今回の騒動はすべて、広報と販売戦略に強い人物がいればここまでにならなかったし、NFT、スペクターパックについてもトラブルにならなかった。この点からもやはりCCPは広報と販売戦略を担う人物を雇用するべきだと思う。

これは一般的なゲームをやってない担当ではなく、EVEをプレイしているゲームを理解している広報と販売戦略を担う人物、という意味でだ。

これらの答えはすべてFanfesと今後の財務情報で明らかになることだろう。

以上がMuraku Butlerの見解です。